2017年3月12日日曜日

第25話 「官民一体型学校、次のステージへ…」 



  毎年武雄市では、子どもたちが自ら考え、行動し、発表する「トムソーヤフェスティバル」が開催されています。具体的な発表内容は、郷土芸能の披露や活動発表など、子どもたちが地域の活動・学校で学んだことを披露します。
 今年はそのフェスティバルの中で、「武雄花まる学園大討論会」を開催しました。「武雄市の方々に、各学校での取組のことをもっと知ってもらいたい」という思いのもと、各町の校長、保護者代表、地域代表、児童代表に市長、教育長、花まるスタッフを交え、「官民一体型学校」の取組のこれまでと、これからの課題とその先について、討論を行いました。
 討論会は、「本当に子どもたちのためになるのだろうか?」「地域が学校に入ってよいのだろうか?」など、官民一体型学校スタート時の不安の声が出ましたが、今では子どもたちにとっても、そして町にとっても非常に影響力のある、良い取り組みであるいう声が各町から出て、各町が充実感を持って取り組んでくださっていることが伝わってきました。


  討論の終盤は、これからの課題とその先についての討論で盛り上がりました。
  「学校に来てくださる地域、保護者の支援員さん、もっと色々な人に来てほしい」
  「子どもたちが、継続的に『楽しく』『前のめりに』『確実に力をつけられるよう』な
    取組にするには、学校側も常に中身を検討していく必要がある」

 各町取り組みを継続する中で、すでに乗り越えてきた課題、今ぶつかっている課題が出てきました。共通の課題もあり、町独自の課題もあり…、でしたが、素晴らしいことに、話を聞いていると、「今こうやろうとして動いている(実際に動いた)」と、積極的に課題解決に動こうとする姿勢が、発表者の言葉から伝わってきました。
 少し話が逸れますが、討論会に臨む前、事前に参加者に向けてアンケートを採っていました。その中で、とある地区の保護者さんの内容の中で、印象的なものがありました。その内容をまとめると、
「花まるとの契約が10年で切れて、そこで終わりではもったいない。○小の花まるの維持・継続を花まる、市にばかり頼るのではなく、花まるの考えをベースに置きながら、○町バージョンを町独自の形に昇華していく方法を考えていくべきではないでしょうか?」
というものでした。
 
  これからの話をされる皆さんの様子や、上述の保護者の声からも、官民一体型学校は次のステージに上がってきていると、私自身は手ごたえを感じています。
  これまではトップダウンで決まった教育政策を、学校の中で固めていくことが先決でしたが、各町で一定の手ごたえを感じているからこその声なのではないでしょうか。
 これからは、この取組がトップダウンからボトムアップで進められ、各町の独自性をより強めていくことで、さらなる発展が見込めるようになってくるはずです。そしてその時期がすでに始まりつつあるとも言えます。
 「学校・地域・保護者」が一体となって、町の子どもの教育を考える体制が、言葉だけではなく、形として動きだしています。まさに「地域の子は地域で育てていく」スローガン通りのことが、武雄では実際に起こっています。

第26話 「声は自信を表し、また自信につながる」

 卒業式シーズン。武雄の各小学校でも卒業式に向けての準備が進められている。
 これを読んでいる皆さんも小さい頃に行ってきたであろう、「卒業式の練習」。これもまた準備の一つとして行われている。
 
 昨年度から「官民一体型学校」としてスタートした武内小では、昨年度先生方の間で、こんな声が頻繁に出ていた。
「卒業式の練習をやっているけど、減らしてもいいよね」と。
 
これに付け加える形で、教頭先生もこんなことをおっしゃっていた。

「卒業式の中で特に大変なことが、『元気な声を出す』ということ。卒業式の中で子どもたちは将来の夢を言ったり、歌を歌うことがあったりするのだが、どうしても声が小さくなってしまうケースが多い。でも、今年(今で言う昨年)は違う。花まるタイムを通して、はきはきとした声を出すことが身についているから、なんの抵抗もなく出ている。加えて、集中力もついてきているからか、きびきびした行動もとれている。」と。

私にとっては「目の前で見ている子どもたちの姿が普通なのだろう」としか思っていなかったのだが、長い間学校にいる先生の感じていることだから、明らかな変化なのだろう。生活の中で、花まるが大事にしていることが確実に子どもたちに染みついていることはうれしい限りだ。

 大きな変化を実感していた昨年があっての今年。昨年度「減らしてもいいくらい、子どもたちがすごい」と感じていた武内小では、なんと今年も驚くくらい、子どもたちが頑張っていて、また「もっと少なくしようか」という声が練習を1回やっただけで出てきているのだ。今年1年子どもたち、先生方が頑張ってきたからこそ、さらに子どもたちがレベルアップしてきた証拠だ。
 
 武内小では、興味深いことがもう一つあった。
この3月で卒業する6年生。私が彼らと出会って2年半になる。ほかの学年より人数が少なく、また男子の比率も低い。それも影響してなのか、私が出会った当時は声も小さく、どこか生命力のない、内に籠った印象を受けたことを今でも覚えている。しかし、彼らと接すると、元気がないというわけではなく、むしろ楽しげに話をしてくれたり、活発な一面をのぞかせたり、面白いアイデアをたくさん出してくれたりと、実はエネルギーをもった子たちばかりなのだ。

 そんな彼らもほかの学年と同様、花まるタイムを通して、声にも自信が乗り移り、はきはきした声が出ることが当たり前になってくる。今では、どの学年よりもメリハリをつけて取り組んでいる。
6年生の彼らが花まるタイムを行っている様子を、弊社のスタッフに見てもらう機会があった。
そのスタッフが「これ、本当に6年生ですか?うちの教室の子たち以上に元気でメリハリつけた行動をしていて、本当に感動しました!」という感想を言っていた。外から来た人がそんな感想を述べてくれる。本当に大きな成長だと思う。

 また、先日武内小の校長先生からこんな話を聞いた。
その先生が6年生と会食をしていた際、「花まるどうだった?」と個別に質問をしていったという。
 「Think!Think!はすごく楽しく、頭を使えた!」
「キューブキューブは、3個・4verになるとやはり難しかった…」
「青空教室は、上に立ってチームの子を引っ張ることができて、時には難しいと思ったこともあったが、結果的に楽しかった。」などという声がある中、「音読」に関する話も出てきたという。

 「元々声を出すことは苦手で、あまり好きではなかった。今でも好きかと言われればそうでもないけど、でも自分の声は確実に大きくなったと思います。それは良かったことだと思っています。」

 子どもなりに、しっかりと自分を見つめ、自分の成長を認めている。これ以上ない声だと思う。

 会食の最後、「今の花まるタイム、これからはどうしたらいいかな?」と校長先生が質問をしていくと、みんな同じように、
 「後輩のためにも、絶対に続けた方がいいです」と、自信満々に答えてくれたという。(もちろん、言わせているわけではない)

 官民一体型学校が始まって2年。上級生として官民一体型学校を一緒に作ってきた子たちの卒業式。
 卒業式の練習で、初めは「大丈夫か?」という印象しかなかった彼らが、緊張しながらも、先生方を驚かせるほど、堂々とした姿・声を見せてくれている。
 
 彼らに関わることができ、また彼らの成長を少しでも支えることができたことは、私にとって幸せこの上ない。

 彼らは自信をもち、また自分たちが育った学校に誇りをもって、新たなステージへと旅立っていく。これからの彼らのさらなる成長と活躍を心から祈っている。

2017年2月18日土曜日

第24話 「自分で自分を励ます、認める」

 武雄の子どもたちが取り組んでいる計算教材「サボテン」の取り組み状況を確認することがよくある。
 子どもたちはどれくらい伸びているのだろうか、どこでつまずいているのだろうか…。取り組んでいる姿を見ることで分かる子どもたちの成長もあれば、取り組んだ成果を見て伝わってくる子どもたちの姿もある。それは単純に記録(正答数、タイムの増減)ではない。消しては書いて、書いては消して…、と繰り返したことが見て取れるページからは、「これでいいなんて思わずに、取り組んだんだなぁ」という様子が分かる。「確かめをしました」というチェックのしるしからは、「最後まで手を抜かずに、丁寧に確かめていたんだなぁ」という様子が分かる。どちらも、子どもたちの計算に対して前向きに頑張ろうという気持ちが表れている。

 その中で、少し変わっているが、しかし着実にサボテンで大切にしていることが染みついているのだなぁということがあった。
 2年生のサボテンを見ていると、K.Hのサボテンが目に留まった。
 以下の写真のように、毎日毎日自分の頑張りにコメントをつけているのだ。
 記録が伸びた日は、「昨日の自分に勝った!」と書いてある。


 

 ここまではよくある話。
 もちろん毎日記録が伸びることに越したことはない。ただ、その日の体調、気分、問題の数字の大小で、前回に比べて記録が落ちてしまう日もある。ほかのページを見ると、K.Hにもそんな日があった。
 ただ、驚いたことに、記録が伸びなかった日には、以下のようなコメントが書いてあった。



 「ざんねん、こんどはがんばるぞ!」と、自分で自分のことを励まし、明日につなげようとしているのだ。こんなことなかなかできることではない。思わず「すごいなぁ」とうなってしまった。
本人の中で切り替えて、「また明日も頑張ろう!」という前向きに終えることができると、後腐れなく次に移ることができる。「まぁこんなもんでいいでしょ」という軽い気持ちではなく、まずはしっかりと目の前のことに向き合いながら、それでいて、結果がどうであれ、まずは自分の頑張りを認める。自分の中で「今日も頑張ったなぁ」と思えれば、自然と明日も頑張ろうという気持ちにもつながる。

サボテンで大事な「前の自分に勝てるよう、日々頑張る」という学習哲学が、K.Hの中で着実に育ってきている。

2017年2月14日火曜日

第23話 「学校に秘められた可能性」(花まる:前原)

先日、ある保護者と話しているとこんな話が出てきた。

 

「私は、花まるが始まってから、朝の花まるタイムに都合のつく場合はなるべく顔を出し、あと他の学校のサポートにも入るようになってから、家庭の雰囲気も良くなっているんですよね~」
 
 非常に興味深い一言だったので、深く掘り下げてみると、
 「もともと別のパートをやっていたんですが、その時は小学校に関わることはほとんどできなくて、上の子も割とほったらかし状態だったんです。『手のかからない子』だったこともあって、それに甘えていました。ただ、手のかからない娘だったんですが、高学年になったときくらいから、その上の子と関係が悪くなって…。ほとんど口も利かない状態だったんです。最近は仲が良くなったんですが、『実は56年の時、お母さんのこと嫌いだったんだよね~』とカミングアウトされたんですよ!娘も忙しそうな母を見て、『なんか今話しかけてはいけないんだなぁ』気を使ったんだと思います。 
でも、今は学校に行く中で、いろんな子と接したり、様々な保護者の皆さんとも話したりするようになって、なんか自分も変わってきたなぁと思っていました。『最近は丸くなったよね』って娘も言ってくれて…。今の学校への関わりをスタートさせてから、いろいろいい方向に変わってきています。」 


 学校に来ると、子どもたちと触れ合ったり、また色々な保護者と話が出来たりし、結果そのお母さん自身の人生が豊かになる。花まるをきっかけに、町の色々な人が学校に足を運べるチャンスが増えることは、実は町の人の生活そのものをより豊かにする可能性を多く秘めているのかもしれない。

2017年1月23日月曜日

第22話 「一緒に創る」 (花まる:前原)

昨年末、一人の女性の先生との会話の中で、こんな提案を受けた。

「いつも来ている地域の方と懇談をする機会を作ってくれませんか?」

これまでも地域の方がどんなことを思っているのか、また先生方はどんなことを思っているのか、という両者の声はアンケートで採ってきた。しかし、アンケートで採った意見を両者にフィードバックすればいいと話ではなく、提案していただいた先生の心はその先を見ている。この先生の言葉には、一緒にその場を作っているものとして、互いに何ができて、何をすると子どもたちによりよい学びの時間になるのかを、方向性を共有しておきたいという意思があると、確実に受け取ることができた。

提案をしていただいた先生の思いはもっともであり、私の思いとも重なる。このことはしっかりとその先生に伝え、「やる方向で動きます!」と即答。ただ、実際にはこの懇談+α、花まるタイムの前に少し地域の方とコミュニケーションをとる時間が必要なのではないかとも考えているので、少し形を整えた上で、早いうちに実施へと動いていく。



4回、1時間目の前の15分を利用したモジュール学習である花まるタイム。ほぼ毎日地域の方に足を運んでいただき、一緒に子どもたちの頑張りを見守ってもらうことに本当に感謝であるのだが、継続していくためには、また内容の濃い時間にするためには、先生方から「一緒に見守っていきましょう」という歩み寄りも欠かせないと思っている。学校側からの歩み寄りこそが、来てくださった方々の「次も足を運ぼう」につながるだろうから。

2016年12月23日金曜日

第21話 「成功体験を貯める」 (花まる:前原)

「前原さん、これを見てください!」

 「官民一体型学校の」の一つでもある「武内小」で仕事をしていると、ある先生から話しかけられた。
 その先生が持っていたのは、花まる教室でもおなじみの「なぞぺー」が載っているプリント。週末に私が子どもたちに配付して解いてきてもらったものである。子どもたちには、問題を解いてもらった後、プリントの裏に載せているアンケートで振り返りをしてもらっている。振り返りと言っても内容は非常にシンプル。「今回の問題、楽しく取り組めましたか?」と、「どの問題が楽しかったですか?またそれはなぜですか?」という質問、そして最後に「解いてみての感想を書いてみよう」の3つ。

 私に声をかけてくれた先生が見せてくれたのは、とある子のプリントに書かれていた振り返りであった。 
 武内小の2年生の女の子が書いてくれた振り返り。
 
「わたしはスクエアパズルがたのしかったです。なぜかというと、『「1」はすぐにきまるから』などとかんがえていくとすぐにできたからです。」

この振り返りを見せてくれた先生が興奮気味に、「いや~、この感想を見ると、しっかりと力がついてきているんだなぁって実感が湧きますよね!」と話してくれた。
他の学年の感想も見せてくれた。

「「難しかったんだけど、何とか頑張って解いてみたらすっきりした!」
「前よりもナンバーリンクがわかってきた!分かるとすごく気持ちがいい!」
「ナンバーリンクを解くことが速くできるようになってきた!」
「今度はひっかけ問題のようななぞぺーも見てみたいな!」
「次は自分もなぞぺーを作ってみるよう頑張ります!」
「ぼくはナンバーリンクが大好きです。なぜなら、一つ一つ決まるところを考えていって、最後完成しているのが本当に気持ちいいからです!」
必死に考える姿勢が、消した跡からも伝わってきますね!

これらの感想からも子どもたちが「考えることを楽しんでいる」様子が伝わってくる。
また感想の中には、「ナンバーリンクのやり方を今度の授業でもう一回知りたくなった!」という声もあった。私はこの声を好意的にとらえている。難しいと感じた時、「できな~い」「めんどくさ~い」で終わるのではなく、「どうやったらできるんだろう?」という思いがあるから、こんな声が上がってくるのだと思う。

以前とある本の中で、「偏差値55以下の子は予習型、55以上の子は復習型がよい」という話があった。ちなみにこれはどの母集団でも同様に考えていいという。
この話について詳しく読んだ後、私は次のように解釈した。
「偏差値で分けるということは一つの基準だが、目の前の子の学習への向き合い方を見極めることも一つ。その上で学習スタイルを予習型か復習型のどちらにするか考えて実践する方が、効果は出るのだ」と。
ここではなぜそういうスタイルにした方がいいのかというところにスポットを当てたい。

予習型にした方がよいという判断を下すにあたって。これは「その子が、授業を聞いて理解し、自分で扱える状態で家に帰ることができるかどうか」が基準である。事前に授業内容をある程度理解して授業に臨むと、「(1)わかっていることがあれば堂々と手を挙げて発表ができる」「(2)自分だけではわからなかったことだけに集中して話を聞くことができるので、学習内容を確実に理解することができる」。授業での成功体験(「分かり切った!」「発表できた!」など)は一見小さいかもしれないが、確実に自信につながる。
一方の復習型。授業を一度聞いて理解できるようなタイプの人間が予習をしてきてしまうと「先生、それ知っている~」と、授業自体がつまらなくなる。こういうタイプは、自分の知的好奇心をくすぐるもの・知識をフル稼働して考えないといけない課題などが提示されるほど、前向きに取り組もうとする。彼らにとっては、追究した成果・フル稼働して証明した答えが、自己肯定感を高める要因となる。

さて、少し長くなった。予習型・復習型については、ぜひ検討していただいていいと思うが、私が一番強調したいことはここではない。いずれかを選択するにも、子どもたちが成功体験を得られているかという視点が大切にされているということが注目すべきである。

成功体験がたまっていけば、できたときの快感が体に染みつく。追究できるタイプの人は、この快感を知っているから自然と「よし、もっとやってやる」「この方法じゃないかぁ、じゃあ別の方法でやってみるか」と粘り強くやってみる。先述の本の中でも、「東大や京大など、世間一般で賢いとされる人間や、イチローのような一流のアスリートなどは、勉強法・トレーニング法ももちろんなのだが、結局は最後の最後までしっかりと『泥臭くできる人間』である」という話も書かれていた。

泥臭く考えるために必要な粘り強さ。「めんどくさ~い」とすぐに投げ出すことなく、立ち向かう姿勢。これは「しっかりやりなさい!」と言われたからといってすぐに身につくことではない。立ち向かって何とか頑張りぬけたという経験が積み重なるからそれが習慣になる。その頑張るための動機。様々なのだろうが、その動機の一つに「気持ちよかった~」「おし、できた!」「あ、そういうことか!」という感動は大きく影響するのだと思う。

武内小の感想からは、彼らの心の中にしっかりと「成功体験」が積み重なってきているということが伝わってくる。この時期に貯めている「成功体験」が、将来彼らを動かすエンジンとなることを想像すると、本当に楽しみである。

2016年11月14日月曜日

第20話 立場が人を育てる (花まる:前原)

118日に「官民一体型学校」の一つ、朝日小学校で「13年生」だけを対象にした青空協室を実施した。
武雄で実施してきた青空協室のほとんどは、「16年生」が集まって実施しており、56年生が班のメンバーを引っ張ってまとめてくれている。活動を繰り返す中で、「どう伝えると、下級生は動くのか」が経験で分かってくるので、上級生は自然とリーダーシップを発揮してくれるようになってくる。
ただ、朝日小は全校生徒400人以上。とてもではないが、「16年生」が全員集まって動いて・・・ということになると、運営上難しい部分が出てしまう。ということで学年を分けて実施をしているのだが、「13年生」という括りで行う青空協室は初めて。当日まで、どうなるか未知数な面がたくさんあった。
みんなで頭を突き合わせて相談中…!
特に3年生がチームを引っ張る立場になるという点が、最も未知数であった。「自分たちが引っ張るんだ・・・」と3年生自身も不安だろうと思い、事前に私から「当日こんなことをするよ!」という話は少ししていた。それでもやはり不安。3年生くらいだと、楽しいことが目の前にあると、どうしてもそっちに気を取られ、突き進んでしまう時もある。その中で、「みんなで楽しんでやる」という目的で活動できるのかどうか・・・。



どうだろうか~?と、半分わくわく、半分どきどきの入り交じった複雑な気持ちで体育館に足を運ぶと、集合5分前にも関わらず、3年生が班ごとに別れ、12年生を出迎えるよう待ち受けていた。もちろん、担任の先生のお手伝いもあってなのだが、「今日はぼくたち、わたしたちがみんなを引っ張ります!」という気合いがびしびしと伝わってきた。「お、今日は3年生の新たな一面が見られるのでは?」と、私の心の中は、わくわく感でいっぱいになり、元々心にあったどきどきはいつの間にか消え去っていた。

 活動が始まり出すと、子どもたちの動きが更に良くなる。
 「ピクチャーリーディング」というプログラムでは、全員で顔を付き合わせて写真を見ながら、「この写真は~を撮ったやつじゃない?」と話し合っている。12年生が置いてきぼりにならないよう、「これ、どこの写真か分かる?」としっかりと会話に入れる。みんなで問題をシェアして、考える姿は大人顔負けだ。
シューズのサイズを使えばいいんだ!と細かく測っていますね!
 続いて、「ぴったりメイキング」というプログラム。体感や身の周りの物を駆使して、しかし定規やメジャーは使わずに、お題の長さになるように物を並べたり、タワーにしたりして表現するプログラムなのだが、ここでも3年生が「みんなのシューズを使おうぜ!」「~くんの身長は何センチ?」とどんどん話しかけている。

 活動中、私はそれぞれの班の様子をチェックしながら見回り、時には班の12年生に話を聞いてみるようにしていた。
 例えば「ピクチャーリーディング」では、「今何を探しているの?」や、「どれくらい見つけられた?」と聞いてみた。すると、12年生からしっかりと「今ね、~探しているんだよ!先生、ヒントちょうだい!」「今ね、6個!あと少し!」と答えてくれることがほとんどだった。これらの回答からも、下の子たちが活動に入り込めている様子が伝わる。ということは、3年生がしっかりと巻き込んでいるという表れとも言える。

どれくらいの大きさかなぁと真剣に測る様子が伝わりますね!
 活動前の3年生の姿をもう一度思い返してみる。繰り返しにはなるのだが、彼らの姿からは「今日はやってやるぞ!」という気合いが満ちあふれていた。「こうやって声をかけよう」「引っ張っていこう」ということは、言葉で教えるだけで、できるようになることでは無いと思う。「自分たちがなんとかせんばいかん!」という立場になり、行動してみたことが彼らの心を大きく変化させている。
 「うちの3年生の息子がかっこよく見えた」と帰りに伝えてくれた保護者がいた。それは上手くまとめていたという結果ではなく、必死に班のメンバーのことを思い、行動する姿を見ての感想だという。そういう姿があったから、12年生も自然とついていきたくなったのだろう。


 「立場が人を育てる」。よく聞く言葉であるが、改めてその言葉の意味を強く感じることのできた一日であった。