2016年12月23日金曜日

第21話 「成功体験を貯める」 (花まる:前原)

「前原さん、これを見てください!」

 「官民一体型学校の」の一つでもある「武内小」で仕事をしていると、ある先生から話しかけられた。
 その先生が持っていたのは、花まる教室でもおなじみの「なぞぺー」が載っているプリント。週末に私が子どもたちに配付して解いてきてもらったものである。子どもたちには、問題を解いてもらった後、プリントの裏に載せているアンケートで振り返りをしてもらっている。振り返りと言っても内容は非常にシンプル。「今回の問題、楽しく取り組めましたか?」と、「どの問題が楽しかったですか?またそれはなぜですか?」という質問、そして最後に「解いてみての感想を書いてみよう」の3つ。

 私に声をかけてくれた先生が見せてくれたのは、とある子のプリントに書かれていた振り返りであった。 
 武内小の2年生の女の子が書いてくれた振り返り。
 
「わたしはスクエアパズルがたのしかったです。なぜかというと、『「1」はすぐにきまるから』などとかんがえていくとすぐにできたからです。」

この振り返りを見せてくれた先生が興奮気味に、「いや~、この感想を見ると、しっかりと力がついてきているんだなぁって実感が湧きますよね!」と話してくれた。
他の学年の感想も見せてくれた。

「「難しかったんだけど、何とか頑張って解いてみたらすっきりした!」
「前よりもナンバーリンクがわかってきた!分かるとすごく気持ちがいい!」
「ナンバーリンクを解くことが速くできるようになってきた!」
「今度はひっかけ問題のようななぞぺーも見てみたいな!」
「次は自分もなぞぺーを作ってみるよう頑張ります!」
「ぼくはナンバーリンクが大好きです。なぜなら、一つ一つ決まるところを考えていって、最後完成しているのが本当に気持ちいいからです!」
必死に考える姿勢が、消した跡からも伝わってきますね!

これらの感想からも子どもたちが「考えることを楽しんでいる」様子が伝わってくる。
また感想の中には、「ナンバーリンクのやり方を今度の授業でもう一回知りたくなった!」という声もあった。私はこの声を好意的にとらえている。難しいと感じた時、「できな~い」「めんどくさ~い」で終わるのではなく、「どうやったらできるんだろう?」という思いがあるから、こんな声が上がってくるのだと思う。

以前とある本の中で、「偏差値55以下の子は予習型、55以上の子は復習型がよい」という話があった。ちなみにこれはどの母集団でも同様に考えていいという。
この話について詳しく読んだ後、私は次のように解釈した。
「偏差値で分けるということは一つの基準だが、目の前の子の学習への向き合い方を見極めることも一つ。その上で学習スタイルを予習型か復習型のどちらにするか考えて実践する方が、効果は出るのだ」と。
ここではなぜそういうスタイルにした方がいいのかというところにスポットを当てたい。

予習型にした方がよいという判断を下すにあたって。これは「その子が、授業を聞いて理解し、自分で扱える状態で家に帰ることができるかどうか」が基準である。事前に授業内容をある程度理解して授業に臨むと、「(1)わかっていることがあれば堂々と手を挙げて発表ができる」「(2)自分だけではわからなかったことだけに集中して話を聞くことができるので、学習内容を確実に理解することができる」。授業での成功体験(「分かり切った!」「発表できた!」など)は一見小さいかもしれないが、確実に自信につながる。
一方の復習型。授業を一度聞いて理解できるようなタイプの人間が予習をしてきてしまうと「先生、それ知っている~」と、授業自体がつまらなくなる。こういうタイプは、自分の知的好奇心をくすぐるもの・知識をフル稼働して考えないといけない課題などが提示されるほど、前向きに取り組もうとする。彼らにとっては、追究した成果・フル稼働して証明した答えが、自己肯定感を高める要因となる。

さて、少し長くなった。予習型・復習型については、ぜひ検討していただいていいと思うが、私が一番強調したいことはここではない。いずれかを選択するにも、子どもたちが成功体験を得られているかという視点が大切にされているということが注目すべきである。

成功体験がたまっていけば、できたときの快感が体に染みつく。追究できるタイプの人は、この快感を知っているから自然と「よし、もっとやってやる」「この方法じゃないかぁ、じゃあ別の方法でやってみるか」と粘り強くやってみる。先述の本の中でも、「東大や京大など、世間一般で賢いとされる人間や、イチローのような一流のアスリートなどは、勉強法・トレーニング法ももちろんなのだが、結局は最後の最後までしっかりと『泥臭くできる人間』である」という話も書かれていた。

泥臭く考えるために必要な粘り強さ。「めんどくさ~い」とすぐに投げ出すことなく、立ち向かう姿勢。これは「しっかりやりなさい!」と言われたからといってすぐに身につくことではない。立ち向かって何とか頑張りぬけたという経験が積み重なるからそれが習慣になる。その頑張るための動機。様々なのだろうが、その動機の一つに「気持ちよかった~」「おし、できた!」「あ、そういうことか!」という感動は大きく影響するのだと思う。

武内小の感想からは、彼らの心の中にしっかりと「成功体験」が積み重なってきているということが伝わってくる。この時期に貯めている「成功体験」が、将来彼らを動かすエンジンとなることを想像すると、本当に楽しみである。

2016年11月14日月曜日

第20話 立場が人を育てる (花まる:前原)

118日に「官民一体型学校」の一つ、朝日小学校で「13年生」だけを対象にした青空協室を実施した。
武雄で実施してきた青空協室のほとんどは、「16年生」が集まって実施しており、56年生が班のメンバーを引っ張ってまとめてくれている。活動を繰り返す中で、「どう伝えると、下級生は動くのか」が経験で分かってくるので、上級生は自然とリーダーシップを発揮してくれるようになってくる。
ただ、朝日小は全校生徒400人以上。とてもではないが、「16年生」が全員集まって動いて・・・ということになると、運営上難しい部分が出てしまう。ということで学年を分けて実施をしているのだが、「13年生」という括りで行う青空協室は初めて。当日まで、どうなるか未知数な面がたくさんあった。
みんなで頭を突き合わせて相談中…!
特に3年生がチームを引っ張る立場になるという点が、最も未知数であった。「自分たちが引っ張るんだ・・・」と3年生自身も不安だろうと思い、事前に私から「当日こんなことをするよ!」という話は少ししていた。それでもやはり不安。3年生くらいだと、楽しいことが目の前にあると、どうしてもそっちに気を取られ、突き進んでしまう時もある。その中で、「みんなで楽しんでやる」という目的で活動できるのかどうか・・・。



どうだろうか~?と、半分わくわく、半分どきどきの入り交じった複雑な気持ちで体育館に足を運ぶと、集合5分前にも関わらず、3年生が班ごとに別れ、12年生を出迎えるよう待ち受けていた。もちろん、担任の先生のお手伝いもあってなのだが、「今日はぼくたち、わたしたちがみんなを引っ張ります!」という気合いがびしびしと伝わってきた。「お、今日は3年生の新たな一面が見られるのでは?」と、私の心の中は、わくわく感でいっぱいになり、元々心にあったどきどきはいつの間にか消え去っていた。

 活動が始まり出すと、子どもたちの動きが更に良くなる。
 「ピクチャーリーディング」というプログラムでは、全員で顔を付き合わせて写真を見ながら、「この写真は~を撮ったやつじゃない?」と話し合っている。12年生が置いてきぼりにならないよう、「これ、どこの写真か分かる?」としっかりと会話に入れる。みんなで問題をシェアして、考える姿は大人顔負けだ。
シューズのサイズを使えばいいんだ!と細かく測っていますね!
 続いて、「ぴったりメイキング」というプログラム。体感や身の周りの物を駆使して、しかし定規やメジャーは使わずに、お題の長さになるように物を並べたり、タワーにしたりして表現するプログラムなのだが、ここでも3年生が「みんなのシューズを使おうぜ!」「~くんの身長は何センチ?」とどんどん話しかけている。

 活動中、私はそれぞれの班の様子をチェックしながら見回り、時には班の12年生に話を聞いてみるようにしていた。
 例えば「ピクチャーリーディング」では、「今何を探しているの?」や、「どれくらい見つけられた?」と聞いてみた。すると、12年生からしっかりと「今ね、~探しているんだよ!先生、ヒントちょうだい!」「今ね、6個!あと少し!」と答えてくれることがほとんどだった。これらの回答からも、下の子たちが活動に入り込めている様子が伝わる。ということは、3年生がしっかりと巻き込んでいるという表れとも言える。

どれくらいの大きさかなぁと真剣に測る様子が伝わりますね!
 活動前の3年生の姿をもう一度思い返してみる。繰り返しにはなるのだが、彼らの姿からは「今日はやってやるぞ!」という気合いが満ちあふれていた。「こうやって声をかけよう」「引っ張っていこう」ということは、言葉で教えるだけで、できるようになることでは無いと思う。「自分たちがなんとかせんばいかん!」という立場になり、行動してみたことが彼らの心を大きく変化させている。
 「うちの3年生の息子がかっこよく見えた」と帰りに伝えてくれた保護者がいた。それは上手くまとめていたという結果ではなく、必死に班のメンバーのことを思い、行動する姿を見ての感想だという。そういう姿があったから、12年生も自然とついていきたくなったのだろう。


 「立場が人を育てる」。よく聞く言葉であるが、改めてその言葉の意味を強く感じることのできた一日であった。

2016年10月28日金曜日

第19話「『官民一体型学校』、武雄市全11小学校に広がります! (花まる:前原)

10月27日(木)、武雄市と弊社「花まる学習会」が提携して行っている「官民一体型学校」の取り組みについて、平成29年度以降の指定計画が発表されました。

■「官民一体型学校」武雄花まる学園の指定計画
・平成29年4月 西川登小学校
・平成30年4月 山内東小学校、山内西小学校、北方小学校
・平成30年10月 武雄小学校
・平成32年4月 御船が丘小学校

平成26年10月に、同市立武内小学校と東川登小学校が初の「官民一体型学校」の指定を受けて、取り組みがスタートしてからちょうど2年。武雄市の全小学校での実施が決まったことは、花まる学習会として、本当に嬉しい限りです。

学習塾が、学校の中に入り、「学校で長い間貯めてこられたノウハウ」と「塾のノウハウ・メソッド」をミックスさせながら、学校の取り組みをよりよい方向へ発展させていくことは、易しいことでは無いと思っております。
ただ、武雄市の小学校の先生方は、この取り組みに対して、本当に前向き取り組んでくださり、各学校で少しずつ独自の取り組みへと発展が進んできております。
また、地域の方々のご理解があり、積極的に協力してくださること、発展の大きな原動力となっています。
「学校のことは学校に任せる」ではなく、「町の子どものことは、保護者・学校だけでなく、町民全体が関わり、小さいことから実践を積み上げていく」という姿勢。武雄市の皆さんが、このスタンスで動いてくださっていることは本当に素晴らしく、この姿勢があるからこそ、全国に誇るべき取り組みへと着々と進化してきているのだと思っております。

すでに先行して取り組んで下さっている武内町、東川登町、朝日町、橘町、若木町の皆さん、各町の学校を一緒に盛り上げてくださり、本当にありがとうございます。
来年度からスタートする西川登町、再来年度以降本格的に取り組みがスタートする山内町、北方町、武雄町の皆さん、たくさんご協議を重ね、町として決断していただいたこと、本当に感謝しております。

 武雄市の子育て環境が、さらによりよいものへと発展していけるよう、今後も努めて参りますので、どうぞよろしくお願いいたします。


2016年10月26日水曜日

第18話 「これまで」と「今」をつなげる (花まる:前原)

  官民一体型学校の一つとして、今年度よりスタートした「武雄市立橘小学校」にて。
 約1ヶ月ぶりにこの学校の、朝の「花まるタイム」を見る。どんな感じだろう…と楽しみに学校へ足を運んだ。

 1年生のクラスにて。
なにやら地域の方がシールを持っている。
地域の方が独自に持ってきてくださったのだろうか、それとも子どもたちからもらったものなのだろうか・・・。

その日に読む箇所を一通り読み終わると、子どもたちがシールを持っている地域の方のところに集まりだす。何が始まるのか?と見ていると、子どもたちが順番に、先ほど読んだ文章の「暗唱」を始めだした。しっかり暗唱をできた子は、音読用の冊子の表紙にシールをもらう。地域の方がもっていたシールは、「がんばって暗唱したね!」と認めるためのシールだったのだ。
 地域の方からシールをもらっている子どもたちの様子を見ると、非常にうれしそう。「見て先生、シール2枚目ゲットしたよ~!」という声には充実感がつまっていると同時に、「次もがんばるぞ~」という前向きな気持ちもあふれていた。

 橘小学校のほかに、同じく官民一体型学校である「武内小学校」「東川登小学校」でも、音読については似たような取り組みを行っている。ただ両校の場合は、「花まるタイム」の時間にやるのではなく、覚えられたと思ったら、校長室に行って、校長先生の前で暗唱をする。これも音読へのモチベーションを高めるやり方の一つだと思う。

 もちろん、「花まるタイム」の音読は「読んでいる文章・言葉を覚える」ために行っているものではない。根底にあるねらいは、「古来ずっと引き継がれてきている美しい文章・言葉に親しむ」ことと、「しっかりとお腹からハキハキと声を出すことで発散をする」ことである。この2つのねらいの達成に対して、モチベーション高く取り組むための材料の一つとして、「音読で扱ったものの暗唱 ⇒ 地域の方や校長先生の前で披露、認めてもらう」というやり方は、繰り返しになるが、非常にいいと思う。



 ただこのブログではこの音読への取り組みにスポットを当てたいわけではない。
 この暗唱については、もしかすると「うちの学校でもやっていますよ」というところがあるかもしれない。
 ※現に私が小さいころも学校でやっていた記憶がある。
 
 花まるタイム自体は、学校にとって新しい取り組みである。新しい取り組みだから、常に新しく・・・ということで目新しいものを取り入れようとすることももちろん大切だと思う。ただそれだけではなく、「これまでにやってきた取り組みと何かつなげることはできないか」と考えることも、取り組みの充実化への一手となるのだ。これまで学校にあった資源と、新しく入ってきた取り組みの融合である。

 例えば武内小では、音読と「論語カルタ」「百人一首カルタ」をコラボさせている。これらのカルタは、「花まるタイム」をやっていた取り組み。音読をさせてからカルタをやる、という取り組みをやり続けることで、以前よりも文章を覚えるスピードが確実に上がったという。実感値だけでなく、アンケートからも「学年で割り振られた箇所を全部覚えられました」という子は、以前よりも確実に増えていたというデータも出ている。

 学校教育の中でこれまでやってきたもの中には、練られて作られているものはたくさんある。それは、先生方が「子どもたちが意欲をもって取り組むためには…」という一心で考えてこられたから形になっているものばかり。それらを生かさない手はない。新たな視点が入ることで、より輝きを放つものはたくさんあるだろう。

ここで誤ってはいけないことは、「花まるタイム」で大事にしている花まるの考え方をぶらさないという姿勢である。
 
 ・場を作る側(大人)が子どもたちを先導する行動をとること
・短期集中、切り替えよく進めること
 ・遅い子に合わせるのではなく、全体の切り替えスピードを引き上げるつもりで進めること
 ・毎日繰り返すからこそ、「できたところまででOK!」
 ・「読み、書き、計算」+思考力という学習の土台を固めるプログラムを組むこと
主なものを並べたが、反復することで力をつけていける基礎基本の力を、子どもたちがマイナスな気持ちにならずに、しかし着実に身につけられるには…と考えて、花まるとして出した一つの形が「花まるタイム」だと思ってほしい。


そして、花まるの人間である私が研修や実践で伝えていることは花まるタイムのベースである。このベースに乗りながら、各学校で「こんなことができるのでは?」とアイデアが出てくることは大歓迎。さらに言えば、この先学校間で「取り組みの様子」から学び合える環境を作り出すことができれば…、と思い、現在模索中である。

2016年10月1日土曜日

第17話 Hの変化から (花まる:前原)

 「官民一体型学校」の一つである、とある学校の校長先生が、「最近、3年生のHが落ち着いてきたんだよね。」と話されていました。
 12年生のころは、相当なやんちゃな子だったH。元気が有り余って、少し落ち着きのないタイプだったようです。そんな彼が最近少しずつではありますが、落ち着くようになってきていると校長先生は話されていました。私自身、彼と関わるようになったのは今年度からですが、年度当初から比べてみても、落ち着いてきたと感じていたところです。

 もちろん、小学校にいる子どもたちは、日々目まぐるしく成長・変化をしていく時期を生きており、Hの変化も成長過程の一つだと思います。
 ただ校長先生や私の現場感覚では、Hの変化の要因として、「お母さんの存在」が一つあげられると意見が一致しました。

 Hのお母さんは、お仕事をされている方ですが、少し時間に余裕があれば、朝の「花まるタイム」に来てくださっています。家事、仕事と多忙な中で、それでも我が子が通っている学校の力になろうと、足を運んでくださる姿勢には、本当に頭が上がりません。
 また、朝の「花まるタイム」の前に必ずある「校長先生からの『朝のクイズ』」に、Hのお母さんは、「校長先生、こんなクイズどうですか?」と、問題まで作ってきてくださることもあります。
 ほかにも、定期的に行っている「青空協室」にも顔を出してくださり、子どもたちと一緒に活動に夢中になって楽しんでいる姿を見せています。
 これら学校の活動を積極的に応援してくださるHのお母さんの様子を、校長先生からHへと、直接話をしてくださっているとのことです。「今日もHのお母さんが、学校に来てくれていたよ!おうちでも『校長先生がありがとうと言っていたよ!』と伝えておいてね!」「今日のクイズ、Hのお母さんからのクイズだったんだよ!」など。伝えると、Hも少し嬉しそうにするそうです。自分のお母さんが学校に来てくれていることはもとより、学校の力になっていることは、実は子どもにとって、非常に嬉しいのでしょう。

 以前ある6年生の女の子がこんなことを言っていました。
 「授業参観もいいけど、『花まるタイム』にも来てほしい。」
 6年生の女の子も、心の底では自分の日々の頑張りを見てほしいし、見てもらえるだけで安心して頑張ることができるのでしょう。
お忙しい中、足を運んでいただき、本当にありがとうございます。

ここで、保護者の皆様が学校に来てくださることにより、期待できることについて、お伝えします。
 保護者の皆様が学校に足を運び、学校の活動に関わってくださる回数が少しでも増えることで、子どもたちの学校での頑張りを伝える回数が確実に増えると思っています。回数が増えることは、信頼関係の構築にもつなげることができます。結果、子どもを中心とした、学校と家庭のネットワークが確実に強固になり、信頼関係はより密になるはずです。もちろん今は電話、メールと連絡手段は様々ですが、それでも「面と向かって話す」ことで、安心感を作り出せることは言うまでもないと思います。
 
また、保護者の皆様が学校で聞いてきたことは、家庭でのコミュニケーションの種にもなります。学校での頑張りが、家庭内で子どもたちへとフィードバックされていくと、翌日の学校生活にもつながり、好循環を生みます。

保護者の皆様が、学校に足を運んでくださる回数が増えることによる好影響は、少しずつ芽が出てきています。その芽が少しずつ開き、子どもたちにとって、よりよい教育環境が作り上げられていくことを期待して、活動しております。

2016年9月15日木曜日

第16話 まず環境を作る、すると流れが生まれてくる(花まる:前原)

先日武雄市の「官民一体型学校」の一つでもある武内小の花まるタイム終了後、地域の方と話をしていた時、
「武内小には囲碁をするクラブはありますかね?」という質問を受けた。
 武内小では12か月に1回行われるクラブ活動の一つに、「囲碁・将棋クラブ」があり、直近の日程は10月の上旬。その話をすると、その方は「私は囲碁が好きでね、昔子どもたちに教えたことがあるんですよ!もし武内小にあればなぁと思っていたんですが…。・それでは10月のそのクラブに参加できれば!」とうれしそうな顔をされて帰っていった。

 質問をされた方が1人であっても、非常に大きなこと。地域の方とのやりとりから、地域と学校が、以前より近くなったことを肌で感じた。
 これまでは、花まるタイムが終わった後、地域の方が集まっている場で、「今度家庭科で裁縫をやるんですが、どなたかお手伝いできる方いませんか?」や、「明日の1時間目、3年生が国語の時間で発表の練習をするので、一緒に見てくれませんか?」と、学校の先生から地域の方へとお願いすることは何度もあった。
 ただ、今回は違う。地域の方から「参加してもいいですか?」と声をかけてくれた。これは、学校にくることの敷居が低くなり、地域の方も学校にどんどん足を運びやすくなってきたということの表れとも捉えられる。

 また、同じく「官民一体型学校」の一つでもある橘小学校。8月末、夏休みが明ける直前の登校日に「青空協室」を行った日があった。通常であれば、朝の花まるタイムの前後で、地域の方が部屋に集まった際に、「今度△月□日に『青空協室』があるので、ご都合よければぜひ来てみて、子どもたちの様子をご覧ください!」とお知らせしている。また来てくださる方には、事前に名前を書いていただいている。
ただ、8月末の「青空協室」についてお知らせをしたのは7月の半ばであり、記名をしてくださった人数は10人弱。しかも、その方々が覚えているかもわからない。どれくらいの人が参観にいらして、子どもたちと一緒に活動をしてくださるか…。

どもとのふれあいが増えることが、
次も足を運ぼうという気持ちにつながります。
 今回は地域の方で来てくださる方々は少ないだろうという、私の不安は見事に裏切られる。開始前に体育館に行くと、なんと30人ほどの地域の方が参観にいらして、青空協室に参加してくださったのだ。おそらく、誘い合わせてくださったのかもしれないが、それでも30人もの地域の方が、自然と子どもたちの様子を見に学校にいらして、見守ってくださる。活動中も子どもたちとコミュニケーションを取りながら、楽しそうにして、笑顔で帰られる方が多数いらした。

 「官民一体型学校」で行っている「花まるタイム」をはじめ、武雄では地域の方が学校に関わることがこれまでよりも増えてきている。
上記2つの話からも分かるように、学校と子どもに関わることが増えれば増えるほど、学校に足を運びやすくなり、ただ行くのではなく、子どもたちと学校で、また学校外でコミュニケーションを取ることが増えると、学校により行きやすくなる。
また、継続的に学校に行ける環境があり、繰り返し地域の方が学校に足を運ぶようになると、自然と「地域の方から足を運んでみる」という行為も次第に生まれてくる。



 子育ては保護者や先生だけに任せていてはいけない。口で言うことは非常にたやすいことです。ただ、それを行動に移すことが難しい。どんな行動をすればいいのか、どんな声かけをすればいいのか、そもそも今の子どもたちってどんな子たちなのだろうか・・・。

地域の方が学校に集まれば、自然と輪が生まれ、
取り組みへの意見交換が行われます!
 武雄市では、学校を舞台として地域の方が足を運べ、子どもたちと接する環境を作っている。少しずつではあるが、「よし、足を運んでみよう」という流れが生まれてきている。「来てもらう」ステップから、「地域の方が自ら足を運ぶ」新たなステップに入ってきている。着実に学校から、地域の子育てが変わりつつある。

2016年8月8日月曜日

第15話 「武雄初!保育園での青空協室 」 (花まる:前原)

729日に、武雄市立朝日小学校(今年度より官民一体型学校となった学校)のとなりにある、「あさひ保育園」にて、年長クラスのお泊り保育のプログラムの一環で、青空協室をさせていただいた。
きっかけは、懇意にさせていただいている、あさひ保育園の園長先生との会話から。

「せっかくとなりの小学校で花まるのメソッドを取り入れているのだから、保育園でも少し体験させて、子どもたちに『小学校が楽しみだ!』と思ってもらいたい。また、園の保育士たちにも、『今小学校でやっていること』を知ってもらうことは、今後の保育にもつながっていくと思う。」

現在、武雄市では、「幼保小連携」の強化が進められ、幼稚園の先生、保育園の保育士、小学校の教員での合同研修や、相互参観はもとより、日常生活レベルでの連携がより図れないか、各現場で協議がされている。もちろん、日常レベルでの交流(3年生と年少さんの交流や、5年生と年長さんの交流など)を行うことによって、子どもたちのつながりは作られていくだろう。ただ、この「幼保小連携」では、教員や保育士が、現場で主体的に頭を働かせ、子どもに触れ合わなければ、互いの現場で大事にしていることは、身に染みないと思う。
この視点からも、学校で行っている花まるメソッドを生かした青空協室を、保育園の年長さんでも楽しめるような運営方法・内容でやってみる、ことには非常に意味があると思い、実施をしてみた。
青空協室は、もともと「16年生までの子どもたちが、男女混合で構成された縦割り班ごとに分かれ、五感をフルに使い、チーム内でコミュニケーションを取りながら、チームで課題を解決していく」活動である。
体を動かして表現をしてみたり、あらゆるところまでものを探してみたり…ということに関しては、園児のほうが、小学生以上に何の抵抗感もなくやれてしまうだろうという期待は大きかった。一方で「自己主張がまだまだ強い5~6歳の年代で、集団での活動はできるのだろうか…」という考えがなかったわけではないが、「集団」は小学校に入れば、通ることになる道であるので、体験を通して、「集団で何かをする楽しさ」を肌で感じてほしい、そう思い、小学生同様に「集団でやる」こともメインの目的の一つとした。

当日行ったプログラムは以下の3つ。
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「聖徳太子!」…チームを2つに分け、言葉を話す側と聞く側に分かれる。話す側には「2文字」の言葉を割り振る。数メートル離れたところに立つ、聞く側の子どもたちの耳に届くように、元気な声でチーム一斉に読む。ほかのチームも一斉に読むため、聞く側は耳だけでなく、口の動きを見る工夫や集中して聞くことが求められる。

「形さがし!」…こちらが指定した形(しかくやさんかくなど)を園庭からたくさん探してくる。ほかのチームよりもより多く探せるよう、チームで動きながら、日ごろ活動している園庭を様々な角度から見てみる。

「なりきりモーション!」…班ごとに割り当てたお題(動物園や水族館)の一場面を、班で役割を決め、演じ切ってもらう。「こう演じればいい」という答えがない中で、どう演じればわかりやすいか、また見ている人が面白いと思えるのか、突き詰めれば突き詰めるほど、面白さが増すプログラム。
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じゃ~ん!ゴザは広げると四角になるよ!
この発想には驚きです!
や③では、保育園の子どもたちは、小学生や大人にはなかなかない視点で園庭を見つめたり、場面を演じたりしていた。
 子ども達なりの考えを表現したり、発揮したりする場となり、みんな「やりきった!」という達成感を持った様子だった。

特にでは、自分が演じているものを、見ている子どもたちにあててもらえることで、嬉しそうに「正解!」と言ったり、「OK!」と合図を出したりと、受け止めてもらえた感動が、子どもたちの顔からたくさんこぼれていた。


では、「集団活動」という面においては、どういう様子を見せてくれたか。
それもこちらの考えを裏切る形で、子どもたちは頑張ってくれていた。
1つ目のプログラムの「聖徳太子!」にて。とある班が、自分たちの班に配られた紙を見ながら、小さな円になって集まり、小さい声で「~~!」とそろって読む練習をしている。班に一枚、紙を配ると、「ぼくが持つ!」「わたしも見たい!」といざこざが起きるのだが、この班はみんなで見られるように、また練習をできるように、工夫をしている。
私がすかさず「〇〇チームは、何やらみんなが見られるように、集まっているね!練習もばっちり!チームワークがばっちりだね!」とみんなに聞こえるように言うと、他のチームも真似をしてくる。次のお題になると、今度は自分たちから集まってみようとする。私からは、「どのチームもみんなで見られるように工夫をしているんだね!すごいなぁ!」と、頑張りを認める。そうなると、2つ目の「形さがし!」でも、チームで探す、動くという様子が行動に表れてくる。
もちろん、まだまだ周りの子の話を聞いてあげる、周りの子の話をさえぎって話はしない、など、これから視野が広くなったり、他者性が育ったりする中で、身につけてほしいこともあるのだが、まずは「チームのみんなと楽しめたなぁ!」という感覚をもって帰ってもらうことはできた時間だと思う。
  後日、園の先生から反応を伺ったのだが、「保護者さんたちからも、『本当に楽しかった!ということが、子どもたちの言葉だけでなく、表情からも伝わってきました!』と好評の声がありました!」という報告や、「私たちでは考えつかないような、また普段は見られないほど考えている一面がたくさん見られて、よかったです!」という声など、好評の声が多数。来年も是非とも!という声が、早速出てきている。ありがたい話である。

 今回のように、小学校でやっていることを、保育園でもできるよう、その年代に合った形と難易度に変更して、やってみる。我慢のできる小学生と異なり、興味が次から次に移ってしまう園児相手であると、苦労することもたくさんあるだろう。ただ、今回のような実践を通して、先生たちからも「またやりたい!」という声があがっていることは大きなことである。何より、活動中の子どもたちと先生方が躍動している姿がたくさん見られたことは、やらせていただいた立場として、非常にうれしかった。今後もこのような活動を増やしていきたいと思っている。

2016年7月14日木曜日

第14話 「周りを楽しませる力」(花まる:前原)

77日に武内小で行った青空協室にて。
今回実施したプログラムは、「たけうちクロスワード」。学校にある物、学校にいる人に関するクロスワードを、班で解いていきます。
1011人構成の班を、実際には「146年生」グループ、「235年生」グループに分けて、56人単位で協力して進めていきます。

5年生のKくん。今回のプログラムでは上述の通り、班を分けて活動させたこともあり、彼は一緒に行動するグループの中で実質リーダーという立ち位置でした。
普段の様子から考えると、彼は班の中でも、自分1人で解き進めようとするタイプ。自分でクロスワードの問題を読んで、「~に答えがあるから行くよ~!」と自分が解いて、みんなをついてこさせる姿を想像していました。

ところが、今回はその想像をいい意味で裏切ってくれました。


例えば、「音楽室の下にある部屋は、〇〇〇〇室」という問題。彼であれば、 すぐにわかるはず。「家庭科室だから、確かめに行くよ!」と言ってしまうのか…と 思っていたところ、 「『音楽室の下にある部屋は〇○○○室』だって!分かった人いる?」とグループの下級生に聞こえるように問題文を読んであげ、考えさせる時間を与えたのです。

他の問題でも同じように、グループ全体に問題を読んであげ、わかった子がいたらその子の意見を反映させたり、自分が分かった時はもちろん答え、わからないときは、みんなをひっぱって探しに行ったりと、まさに「グループのみんなが青空協室を楽しめるように持っていく」リーダーとして、大活躍!

結果的に、Kくんのいたグループが全体の一番でした。ただ、この結果は、Kくんのリーダーシップにより導かれたのだと思います。この班の下級生は「今日の青空協室、たのしかった!」という気持ちで終わることができたことでしょう。
「ここはどうだと思う?」高学年が、下の子にも考えさせる
声かけを上手にしてくれています!

チームで物事を進めるとき、大事な視点の1つは、「活動するにあたって、このチームにいる人がみな幸せなのか」だと思います。活動の成果をよくすることももちろん大事なこと。しかしそのチームでの活動自体は、どんな成果であったとしても続いていきます。ともに取り組むチームのメンバーが前向きに活動をしているのか、 どうやったらそういう環境を作れるのか、こういった視点をリーダーが持てば、活動の質もあがり、チーム力も上がっていくと思います。

今回の青空協室でのKくんの姿から、将来の彼の姿が目に浮かびました。
「ともに働く仲間が輝いて仕事をできるチームを創り上げ、そのチームのメンバーを率いて世の中に影響を与える」姿です。
彼のこれからのさらなる成長が、非常に楽しみになりました!
「チームみんなが幸せか」、このような視点を、繰り返しの活動を通して、養うことができるのも青空協室の醍醐味です。

2016年6月30日木曜日

第13話 「楽しいところに集まる」(花まる:前原)

先日、官民一体型学校の一つでもある、朝日小学校にて、今年度2回目の青空協室が行われました。当日の天気は、あいにくの雨のため、室内での実施でしたが、子どもたちは雨に負けず、元気に頑張っていました!
この学校の特色として、多くの地域の方々(保護者、企業の方々、地域のおじいちゃん、おばあちゃん)が青空協室に参加してくれます。班数が32班もあるのですが、どの班にも最低1人は地域の方が入り、子どもたちと一緒に活動をします。

「青空協室に参加をしてみませんか?」と地域の方に話をすると、「子どもたちと一緒にやるんですよね?私なんかで大丈夫ですか?」「いや~、私じゃ厳しいと思います…」という反応が返ってくることが多々あります。
「何か特別に教えないといけないのではないか?」「何か子どもたちをまとめるようなことをやらないといけないのではないか?」ということを考えてしまい、尻込みしてしまっているようです。「学校=大人が何かを教えるところ」、そういうイメージがあるのかもしれません。

しかし、実際に参加をした方と話をしてみると、「私たちも楽しかったです!」「以前から比べると、子どもたちが良い方向に変わりましたよね!」 と、プラスの声ばかり。もちろん、改善を求める声もあるのですが、それはもっと楽しく、意味のある活動にしようとの思いからだと、プラスに捉えています。そう言った声は、要は、地域の方々が、当事者の立場で、学校を良くしていこうと考えているからこその声。本当にありがたいことです。

青空協室の後、参加をしてくださったお母さんたちと,毎回立ち話をしています。お母さんたちと話せるこの時間は、お家での子どもたちの様子だけでなく、色々なアイデアにつながる話を聞けるので、本当に貴重な時間だと思っています。

話の半分は青空協室に関係のないことで盛り上がり、温まったと思ったところで、 「今日の活動はどうでした?」と聞いています。
そうすると、
「前よりも子どもたちにまとまりがあった!」
「プログラム柄、前回に比べると、まとまって活動しやすかった!」
「子どもたちも、たくさん相談をしていて、話し合いが活発になっていた!」
「私も子どもたちにたくさんアドバイスをしちゃいました!」
など、好意的な意見が多数出てきます。

中には、「青空協室に参加してくれる人たちのシャツを作りたい!なんで、前原先生だけ、【KONG】って書いてある赤のシャツ着ているですか!ずるい!」「花まるタイムを含めて、来たらスタンプをもらって、スタンプがたまったら、シャツをもらえる!ってどうですか?」などの意見も。冗談なようだが、実はこういう「こんなことやってみたら、面白そうですよね!」という意見が、今後の発展のためにも貴重だと思っています。

以前、とある保護者の方が言っていたこと。

 「もちろん、保護者は忙しいんだけど、それはどの保護者も一緒。だって仕事をしているんだもん。 忙しい、だから行けないんです…は、誰にでもできる言い訳で、誰でも流れやすくなる。 そんな中でも、保護者は、もっと学校での活動を知らないといけないし、サポーターにならないといけない。では、どうやって保護者を集めるか。もちろん、強制でもいいんだけど、大事なのは、『学校の集まりが楽しそうだなぁ』と思ってもらえるようにすること。参加している一部が、『学校の集まりに参加すると楽しいよ!』ということを広める。やっぱ、人間は楽しそうなところに寄るから、まずは、参加できる人間が、楽しめる仕掛けをたくさん作らないとね。」

「忙しいんだけどなぁ。仕方ないなぁ」という気持ちでは、どうしてもこなして終わり、そこからは何の発展もないと思います。
「子どもたちのための活動で、大人が楽しむなんてもってのほか!」と思われる方も、中にいるかもしれません。もちろん「子どものために・・・」という大前提があるのは百も承知。ただ、それは視点を変えると、「子どものために、大人が楽しんでいる姿を見せる」という考え方もできるのではないでしょうか?「親の背を見て、子は育つ」ということわざが昔からあるくらいです。
また、「楽しいからやっている」という気持ちには、前向きさがあり、もっと楽しく…という気持ちが芽生えてきます。楽しんでやっている様子を広めていくと、「なんか楽しそうなことをやっているんだなぁ」と思う人が少しずつ増え、それが口コミで広がり・・・、色々な保護者が学校に関われるようになってくると思います。
 
地域の方々も、子どもと同じ目線で青空協室を楽しんでいます!

保護者との会話の中で出てきたアイデア。もちろんすべてを完璧に実行することは難しいのですが、それでも、いろいろアイデアが出るのは、「楽しみたい!」と思っているからこそ。 今参加している方々のアイデアを大切にして、今いる方が「やっぱ楽しいよね!」と思い、発信すること。 これが、「保護者が学校を盛り上げていこうとする動き」が継続する方向へとつながっていくコツだと思います。
今楽しんで、子どもたちのために活動をしてくれている方々の気持ちをくみ取り、実現させ続けていくこと、それが私たち花まるスタッフの役目の1つでもあります。

2016年6月27日月曜日

第12話 今年度初の公開授業を実施@東川登小 (花まる:西郡)

618日(土)、東川登小学校で公開授業が行われました。
官民一体型の教育をより多くの方に見てもらうことが大きな目的の公開授業です。「花まるタイム」から始まり「青空協室」「なぞペー授業」「ICTを利活用した授業」と午前中をフルに使い、盛りだくさんの内容になりました。
昨年度から始まった、官民一体型学校「武雄花まる学園」って一体どんな学校なのか?どんなことをやっているのか?説明は聞いたが、実際はどうなのか?伝統的な学校教育を変えていこうとするこの動きに対しては、不安の声、懐疑的な意見もあります。
それらの声に対して伝えていることは2つです。1つ目は「まずは、見てください」ということ。そしてもう1つは、「『学校教育をさらにいいものにしましょう』、という思いの上に官民一体型学校はあります」ということ。
つまり、この公開授業は、官民一体型学校の今を知ってもらう、今後広めていく意味でも、非常に重要な場となっております。


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「花まるタイム」
4回、15分間のモジュール学習。毎回地域から多くの方々がサポートに来ていますが、公開授業当日も、土曜日であるにも関わらず、多くの方が、子どもたちのサポートのために参加してくれました。
また、今回は授業参観も兼ねていたこともあって、平日だとなかなか参加できない保護者も「花まるタイム」の○付けをやってもらいました。お父さん、お母さんに○付けをしてもらう子どもたちは、はにかみながらも嬉しそうです。一方の保護者の皆さんも、普段の授業参観とはまた異なった、子どもたちの躍動した授業風景を見ることができたに違いありません!



「青空協室」
今回のプログラムは「シャッターチャンス!」です。
出題されたテーマの光景を、16年生で構成された縦割り班で、協力しながら、写真になったつもりで、体を使って表現するプログラムです。今回のお題は、「授業参観」「地域の踊り」「運動会」「給食時間」「入学式」など、「東川登小の一年」に関するテーマをそろえ、どの班もばらばらのお題を演じてもらいました。
このプログラムを実施する上でのポイントは2つ。
○テーマを知らない人にも「何を演じているか」がわかるように演じられるか
○人前で堂々と演じられるか

新学年になって2回目の青空協室でしたが、どの班も、56年生を中心に、チームワークよく、みんなでアイデアを出しあい、すばらしい表現を作り出していました。

例えば「授業参観」のテーマを演じた班では、保護者に連れられてきた幼児を6年生が体を張って演じており、そのテーマの象徴的なシーンを入れる試みもありました。
                    ©豊永和明

また、「入学式(※写真参照)」のテーマを演じた班では、悩んでいたところ、たまたま1年生がかぶっていた黄色い帽子を見て、「入学式では、黄色い帽子の贈呈をやるから、これを使うと、分かりやすいんじゃない?」とひらめいた。それがわかりやすい表現につながっていました。「もっとこうしたらわかりやすい」「これが入ると面白い!」と、一歩踏み込んだ表現を入れてみようとする姿勢から、子どもたちの成長を感じられました。




「なぞペー授業」
昨年度後期から、武内小、東川登小で月に一度実施している「なぞペー授業」。
「なぞペー授業」は、一言で表すと、思考力を育むことを目指した授業です。

※花まる学習会の提唱している思考力:
空間認識力・・・頭の中で自在に立体を動かせる力 
図形センス・・・見えないものが見える力
試行錯誤力・・・手を動かしてあれこれ試す力   
発見力・・・「!」と思いつくことができる力
論理性・・・筋の通った論理的な思考ができる力  
要約力・・・何が書いてあるかを捉える力
精読力・・・一字一句じっくり読める力      
意志力・・・自分で解くことにこだわる力

この授業は、朝の花まるタイム同様、花まる学習会のオリジナル教材やメソッドをふんだんに使用しています。
今回実施した教材は主に3つ。
「たこマン」…マンガの1コマ目を見て、2コマ目にどのようなオチが起こるかを考える、想像力を育む教材
「なぞぺー」…花まる学習会オリジナル教材。思考力を育むために、空間認識、論理性など、様々な分野に関する問題を解いていきます。授業では、まずオリジナルの導入動画を見た後に問題を解いていきます。前のめりになって考えること、人との競争ではなく、自分なりに考えて、自分の「できた!」経験を繰り返し大切にさせる時間でもあります。
「アルゴ」…様々な条件をもとに、相手の持っているカードを論理的に考えて、当てていくカードゲーム

思考力は、現在の教育関係者の中でもキーワードとして上がるほど、注目度が上がっています。それもあって、見学者の関心も高く、「なぞペー授業」には多くの方が参加していただき、興味を持っていただきました。今年度より「官民一体型学校」としてスタートを切った朝日小、橘小、若木小でも、年度の後半から「なぞペー授業」をおこなっていきます。

ICTを利活用した授業」
6年生の算数授業を公開。扱う単元は「円の面積の求め方」の応用です。武雄市ではタブレットを使った「スマイル学習」(反転学習)を推進しています。タブレットを持ち帰り、動画をみて予習、面積の求め方を考えてきます。授業では予め考えてきたことを話し合い、問題解決へと向かいます。
ICTを利活用した授業」の関心は高く、多くの方が熱心に授業を見学しました。
動画の作成は先生が発案して、ICT推進員と共同で作っていく作業です。時間も要し、ご苦労も多い。その分、子どもたちにとって、円の面積(応用)の求め方がより定着していくような授業になっていました。




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授業後には、見学者に集まってもらい、東川登小で行っている特色ある教育活動の紹介と、今回の公開授業に関する質疑応答が行われました。土曜日公開ということもあって、県外の教育関係者、今後「官民一体型学校」の実施を進めていく予定の地域関係者、教員など、多くの方が最後まで参加していました。   
特に、現在「武雄花まる学園」となっている5校(武内小、東川登小、朝日小、若木小、橘小)以外の、市内の小学校・地域も、開校を控えているだけあって、「自分たちもやる」という前提に立って真剣に説明を聞き、鋭い質問もあがりました。
冒頭でも述べましたが、公開授業は、「武雄花まる学園」を理解していただく、とてもいい機会です。今回も多くの方に、「武雄花まる学園」について、知ってもらいました。「見てよかった」と、好評の声をもらえたとともに、質疑応答を通して話ができ、理解を得られたことが、私たちにとって、大きな励みとなっています。

支援員の皆様、学校職員の皆様、そして、子どもたち、公開授業を開催していただきありがとうございます。