2016年6月1日水曜日

第10話 書写と「あさがお」 (花まる:前原)

花まるタイム(週4回、15分のモジュールタイム)では、「あさがお」という、文章の書き写し教材を毎回行っている。花まる学習会の教室で、1~3年生のみで実施している教材なのだが、武雄の花まるタイムでは、4~6年生も行っている。5,6年生に関しては、武雄でオリジナルの書き写し教材を作成しての実施だ。

 花まるタイムを実施していて、地域の方から「『あさがお』は、もっと一文字一文字をきれいに書かせる方がいいんじゃないの?」という声がよく上がる。
 そう言われる方々の気持ちはよく分かる。自分自身、小学生の頃は、「もっときれいに字を書きなさい!」「この一行、もっときれいに書けるから書き直し」と言われることが頻繁にあるような、典型的な「字の汚い男の子」の1人だった。一文字ずつきれいに書いていくことが大事なんだということをずっと言われ続けてきたこそ、分かる。

 もちろん、きれいに書くことを否定はしない。むしろ「人に見せる」ということを考えると、きれいな方が相手に読みやすくなるからいいことだと思っている。
 しかし、「あさがお」はきれいに書くことの訓練をするだけの教材ではないのだ。第一に、「テキパキと文章を書き写す筆遣いを身につける」ことを目的とした教材である。

それの何が大事なのか。「メモ書き」をイメージしてもらえると、分かりやすいのではないかと思う。会話や講演を聴いている中で、大事な話をしていると思ったときは、その内容をメモ書きする。もし、一文字一文字をきれいに書くことが染みついてしまっていると、書き上がるまえに、次に話が進んでしまい、大事なことが聞き取れなくなってしまう。そうではなく、話を聞きながら、「あ、ここがポイントだ!」と頭を働かせながら、書き写す。書き写しながらも、「大事な話を聞く・要点を掴む」という思考は止めない。そちらの方が、確実に内容が頭に入り、学びが進む。

思考の妨げにならないレベルのスピードで書き写すこと。これが身につけば、例えば中学校での板書の取り方も変わってくると思う。一文字一文字を書き写すのではなく、頭に内容を入れながら、書き写すことが当たり前にできるはず。そうなると、確実に中身の理解も進むと思う。

もちろん、「あさがお」でやっていることの訓練で身につく力が、将来的にどこにつながっていくのか、数値的な検証をしていく必要があり、そこが課題の一つであることは確か。ただ、1年間、「あさがお」の意図を理解して、やりきった学校の先生方は、確実に「書き写すスピードが全体的にあがったこと」「板書の写し方が変わり、授業自体のテンポアップも図れるようになった」など、スキルとして「書き写す」力がついてきていることをおっしゃってくれる。

花まるタイムにて、「あさがお」開始前に4つのことの確認をルーティンとしてお願いしている。
◯「鉛筆の持ち方」
◯「書くときの姿勢」
◯「テキパキと、固まりで覚えて書いていくこと」
◯「他の人にも読める字で書いていくこと」
⇒ただ、まずはテキパキと書けることを目標とし、それに慣れた上で、他の人にも読める字を意識して書いていくことを目指す。


上の4つの確認は、ある意味一つの儀式。しかし、まだまだ体に染みつかないうちは、子どものスイッチを入れるねらいとしても、この確認が非常に大事なる。机間巡視をしながら、このポイントを意識して頑張っている子がいたら、すかさず認める。すると、クラス全体の雰囲気も変わる。自分もそこを意識して頑張ろう!と。このくり返しが確実に子どもたちの力になっていく。


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