2016年11月14日月曜日

第20話 立場が人を育てる (花まる:前原)

118日に「官民一体型学校」の一つ、朝日小学校で「13年生」だけを対象にした青空協室を実施した。
武雄で実施してきた青空協室のほとんどは、「16年生」が集まって実施しており、56年生が班のメンバーを引っ張ってまとめてくれている。活動を繰り返す中で、「どう伝えると、下級生は動くのか」が経験で分かってくるので、上級生は自然とリーダーシップを発揮してくれるようになってくる。
ただ、朝日小は全校生徒400人以上。とてもではないが、「16年生」が全員集まって動いて・・・ということになると、運営上難しい部分が出てしまう。ということで学年を分けて実施をしているのだが、「13年生」という括りで行う青空協室は初めて。当日まで、どうなるか未知数な面がたくさんあった。
みんなで頭を突き合わせて相談中…!
特に3年生がチームを引っ張る立場になるという点が、最も未知数であった。「自分たちが引っ張るんだ・・・」と3年生自身も不安だろうと思い、事前に私から「当日こんなことをするよ!」という話は少ししていた。それでもやはり不安。3年生くらいだと、楽しいことが目の前にあると、どうしてもそっちに気を取られ、突き進んでしまう時もある。その中で、「みんなで楽しんでやる」という目的で活動できるのかどうか・・・。



どうだろうか~?と、半分わくわく、半分どきどきの入り交じった複雑な気持ちで体育館に足を運ぶと、集合5分前にも関わらず、3年生が班ごとに別れ、12年生を出迎えるよう待ち受けていた。もちろん、担任の先生のお手伝いもあってなのだが、「今日はぼくたち、わたしたちがみんなを引っ張ります!」という気合いがびしびしと伝わってきた。「お、今日は3年生の新たな一面が見られるのでは?」と、私の心の中は、わくわく感でいっぱいになり、元々心にあったどきどきはいつの間にか消え去っていた。

 活動が始まり出すと、子どもたちの動きが更に良くなる。
 「ピクチャーリーディング」というプログラムでは、全員で顔を付き合わせて写真を見ながら、「この写真は~を撮ったやつじゃない?」と話し合っている。12年生が置いてきぼりにならないよう、「これ、どこの写真か分かる?」としっかりと会話に入れる。みんなで問題をシェアして、考える姿は大人顔負けだ。
シューズのサイズを使えばいいんだ!と細かく測っていますね!
 続いて、「ぴったりメイキング」というプログラム。体感や身の周りの物を駆使して、しかし定規やメジャーは使わずに、お題の長さになるように物を並べたり、タワーにしたりして表現するプログラムなのだが、ここでも3年生が「みんなのシューズを使おうぜ!」「~くんの身長は何センチ?」とどんどん話しかけている。

 活動中、私はそれぞれの班の様子をチェックしながら見回り、時には班の12年生に話を聞いてみるようにしていた。
 例えば「ピクチャーリーディング」では、「今何を探しているの?」や、「どれくらい見つけられた?」と聞いてみた。すると、12年生からしっかりと「今ね、~探しているんだよ!先生、ヒントちょうだい!」「今ね、6個!あと少し!」と答えてくれることがほとんどだった。これらの回答からも、下の子たちが活動に入り込めている様子が伝わる。ということは、3年生がしっかりと巻き込んでいるという表れとも言える。

どれくらいの大きさかなぁと真剣に測る様子が伝わりますね!
 活動前の3年生の姿をもう一度思い返してみる。繰り返しにはなるのだが、彼らの姿からは「今日はやってやるぞ!」という気合いが満ちあふれていた。「こうやって声をかけよう」「引っ張っていこう」ということは、言葉で教えるだけで、できるようになることでは無いと思う。「自分たちがなんとかせんばいかん!」という立場になり、行動してみたことが彼らの心を大きく変化させている。
 「うちの3年生の息子がかっこよく見えた」と帰りに伝えてくれた保護者がいた。それは上手くまとめていたという結果ではなく、必死に班のメンバーのことを思い、行動する姿を見ての感想だという。そういう姿があったから、12年生も自然とついていきたくなったのだろう。


 「立場が人を育てる」。よく聞く言葉であるが、改めてその言葉の意味を強く感じることのできた一日であった。