2018年3月22日木曜日

手作りなぞぺー問題集を6年生にプレゼント!

 武雄市の花まる学園では年間8~9回、各クラスで花まるスタッフによる思考力授業(通称、なぞぺ~授業)を行っています。なぞぺ~授業は、考えることを楽しむ心を育み、論理的思考力・自由な発想力を鍛えることを目的にした特別授業です。


『なぞぺ~』というのは、花まる学習会オリジナルの思考力教材の名前です。迷路や図形問題、論理問題など多種多様な問題があり、それらに「なぞなぞ感覚」で楽しめるように開発されました。

 なぞぺ~授業では、出題された全問を解き終わらせることよりも、その子自身が「この1問を自分で解ききった!」と思えることを大切にしています。クラスの先生や花まるスタッフがヒントをあげる時もありますが、「最後は分かった!解けた!」と思えるようにヒントの出し方を工夫しています。

 『なぞぺ~プリント』には、子ども達が作った問題が出題されることもあります。誰の問題がプリントに掲載されるのかを楽しみにしている子が多く、プリント配付直後は「○○君の問題だ!」「やった、載ってる!」という声がよく聞こえます。ただし、作問は発展課題で、「問題を作ってみたい!」という子だけが挑戦してきました。


 ある小学校の6年生クラスでの先月の『なぞぺ~授業』で、あえて「全員作問」の時間を設けました。4月から彼らの様子を見てきて、秋頃から論理的思考力がぐんと伸びたのを感じていました。やみくもに解き始めるのではなく、どういう道筋で解いたらいいかを考えたり、難しい問題から挑戦したりする子が増えてきたのです。そんな彼らだからこそ、少しレベルアップして「全員作問」に挑戦することにしました。

作問を始める前に『良い問題』のポイントを話しました。

①答え方ができるだけ少ない問題
例えば、ゴールまでの進み方が何通りもある迷路よりも、一通りしかない迷路方が良い問題です。

②「答えが絶対に決まる場所」を順番に解いていけば、必ず解ける問題
「なんとなく」ではなく「このマスには3しか入らないから」というような、「答えが絶対に決まる場所」を見つけ、丁寧に詰めていけば解けるのが良い問題です。

③誰に解いて欲しい問題かレベル設定されている問題
難しければ良い問題、というわけではありません。「簡単」「難しい」という感じ方は人によって違います。1年生にちょうど良いレベルの問題は、5年生によって簡単すぎてつまらない問題かもしれません。どんな人に解いて欲しいかで、問題の作り方は変わります。問題のレベルを調整する方法の一つは「絶対に決まる場所」の多さを変えることです。決まらない」ということは、それだけ場合分けを繰り返し、丁寧に詰めていかなければいけません。

 いざ作問に取り組み始めると、良い問題のポイントをどう押えるか、書いては消しを繰り返しながら試行錯誤する姿が見られました。
 ある女の子は低学年向けの図形問題を作っていました。作問の方法自体はとても簡単なのですが、どうしたら低学年の子にとって簡単すぎず、難しすぎない問題になるか一生懸命に考えていました。その結果、彼女の机の上には消しカスの山が…。
 スクエアパズルを作っていた男の子は、別解のない問題になるように何度も解きなおしていました。実は一カ所、別解ができるマス目があるのですが、ここまで考え抜いた過程が立派です。
 作問の面白さにはまり「もう1問作ってみます!」と作問シートをもらっていく子が多く、多めに用意していた用紙は授業終了と同時になくなりました。


 子ども達から提出された問題を実際に解いてみると、彼らなりの工夫がよく分かります。全部で約50問集まった問題、1つ1つが「良い問題」にこだわって作ったことが伝わってきました。

 そんな50問を1冊の問題集にして、6年生にプレゼントをしました。『なぞぺ~授業』で積み重ねてきたものがギュっと詰まった1冊です。表紙は担任の先生が今まで誕生日プレゼントとして描きためてきた、子ども達の似顔絵を使わせていただきました。
 問題集をプレゼントした後、ある女の子がこんなことを言っていました。

「中学生になっても、なぞぺ~の問題を作って妹に預けるね。」

 卒業生からの、なぞぺ~出題が今から楽しみです。 
 武雄市の6年生の皆さん、卒業おめでとうございます!

2018年3月7日水曜日

地域で見守る ~花まる支援員意見交換会より~

 学校現場で今注目されているキーワードの一つとして「コミュニティ・スクール」というものがあります。

文科省のホームページでは、
「学校と保護者や地域の皆さんがともに知恵を出し合い、学校運営に意見を反映させることで、一緒に協働しながら子供たちの豊かな成長を支え「地域とともにある学校づくり」を進める仕組み」
と説明されています。

 「地域とともにある学校」がどのようなものなのかは、地域・学校によって異なると思いますが、「官民一体型学校 花まる学園」の取り組みは、間違いなくその形の一つであると言えます。


「官民一体型学校の『民』は、民間企業の『民』であり、町民の『民』」

 民間企業である花まる学習会のノウハウを学校に提供するだけでなく、町みんなで子ども達の成長を見守り、応援しよう、というのが「官民一体型学校」の狙いの一つです。

 その仕組みとして、朝に行っている「花まるタイム」には、地域の方が応援に来てくださいます。子ども達と一緒に音読をしたり、テキストに「頑張ったね」と花まるをつけたり、「今日も元気がいいね!」と声をかけてくださったり。
 子ども達との関わり方は様々ですが、「我が子でなくとも、町の子に何かしてあげたい」という温かい想いは同じです。
 そんなふうに花まるタイムに足を運んでくださるサポーター(通称、花まる支援員)に支えていただきながら、官民一体型学校の取り組みは広がってきました。


 前置きが長くなりましたが、3月6日に東川登小学校で、花まる支援員の意見交換会が行われました。支援員の皆さんとは定期的に花まるタイムへの疑問、改善点などを話し合う場を設けています。


 今回、ある男性からこんなご意見をいただきました。

「花まるタイムが始まった3年前、元気よく・テンポよくということを聞いて、その元気の良さにのりきれない子もいるのでは、と心配した。3年経って子ども達の様子を見ると、そういう子はほとんどいないように感じる。ゆっくりな子もいるが、他の子と協力し合って取り組むことができている。」


 花まるならではの「元気の良さ、スピードについていけない子もいるのでは」というお声は、地域の方はもちろん、学校の先生方からもよくあがるものです。最初は抵抗感をもつ子もいるかもしれませんが、繰り返し行っていけば、その子なりに通る声を出せるようになるし、テキパキ切り替えて行動できるようになります。
 花まるスタッフだけでなく、3年間見守ってきてくださった地域の方も同じように感じてくださったのは、とても嬉しいことでした。


 そして花まるタイムとは関係なく、盛り上がったのが6年生の成長についてです。
6年生のクラスは毎朝みんなで決めた「学級の歌」を歌うようにしているのですが、支援員の皆さんは歌の時間から教室にいることが多いのです。
「春に比べて、良い声で歌えるようになったよね」
「綺麗にはもっていたよ」
「卒業式が楽しみ」
と優しい表情で言い合う支援員の皆さん。

 我が子、我が孫ではないからこそ、そういう見方ができるのかもしれません。

 両親、先生達とは違う視点で見守ってくれる大人がたくさん周りにいるのは、とても貴重なことです。「子育ては網で」というのは弊社代表高濱の言葉ですが、「親-子ども」「先生-子ども」の関係だけでなく、地域という「網」で子育てができるこの地域はとても恵まれています。そして、その網を作る場として花まるタイムが機能しています。